ソーシャル・ネットワーク

この監督さんだからとか、この俳優さんだからというので
映画を選ぶことは少ないのだけど
実は、デヴィッド・フィンチャー監督の映画は
ほとんど観ていたことに気づいた。

やはり最初に観た「セブン」の印象が
あまりにも鮮烈だったことが大きい。
めったに読まないノベライズまで読んだくらいだから。

そのフィンチャー監督の8作目
「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)

ハーバード大の学生マーク(ジェシー・アイゼンバーグ)
は、恋人のエリカに振られた腹いせに、ネットに彼女
の悪口を書き込んだうえに、大学のコンピューターを
ハッキングして、女の子の格付けサイトを立ち上げた。
サイトは大人気になるが、マークは大学中の女子学生
から総スカン。さらに、大学から処分を受ける羽目になるが
彼の優れたプログラミングの才能に目をつけた友人に誘
われ、後のFace bookの原型になる、コミュニティサイトを
立ち上げる。

世界最大のSNS Face bookの創設者マーク・ザッカー
バーグの実話なのかと思いきや、当のザッカーバーグの
「キャストの衣装だけは、自分の着ていたものと同じ」
というコメントでも明らかなように、マークの性格や人間像
は、どうやら完全なフィクションらしい。

天才的な才能の持ち主ではあるが、いわゆるオタクで
根暗で、成功はしたもの、親友にも見放されるような
友達になりたくないタイプではあるのだけど。
この映画の最大の魅力は、ラストシーンにあった。

Face bookの大成功で、アメリカンドリームの具現者と
なったマークが、エリカに友達申請をするが、承認されず
マークは何度も更新を繰り返す。
世界中の人々が、ネットワークでつながることを可能にした
男が、いちばんつながりたかった、たった一人の女性に
拒絶されるラスト、切なかったです。

これが実話かどうかということには大きな意味はなくて
テクノロジーにできないことは何なのか
ネットワークと人間との本質的な差異を描くのに
マーク・ザッカーバーグというキャラクターが、まさに
ぴったりだった、そういうことなのだろうと思います。

そして、ザッカーバーグは、この映画に対して
決して好意的な反応を示したわけではありませんが
極めて異色な脚色を施された自分の物語に
強く抗議をしたり、批判したりしなかったというところに
アメリカの文化が、今でも自由な創造性を失っていない
と思えて、とても羨ましくもありました。



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世にも怪奇な物語

まぎらわしいタイトルだけど、タモリさんがナビゲーターの
アレではない。

世にも怪奇な物語(1967) 仏・伊
 原作 エドガー・アラン・ポー

初めて観たのは「日曜映画劇場」で
たぶん中学生の時だったと思う。
細部はほとんど忘れていた。
唯一覚えていたのはラストシーン。

疾走する車、崩落した橋。
細いワイヤーが男の首を切断する。
白いワンピースの少女が、その首を抱えている。

先日GYAOで、数十年ぶりにじっくりと観ることができた。

この映画は、3話のオムニバス構成で
私の記憶に強烈に残ったのは3話目の「悪魔の首飾り」
監督がフェデリコ・フェリーニ 主演テレンス・スタンプ

イギリスの著名な俳優トビー・ダミット(テレンス・スタンプ)
は、フェラーリをくれるというので、イタリアでの演劇の
授賞式に出席する。
冒頭の、イタリアの空港も、受賞パーティーの場面も
風景や人物は、どこか奇妙に作り物めいている。
それは、現実なのか、それともアルコールとドラッグに
溺れたダミッドの意識で歪められた幻覚なのか。
はたまた腐敗した現実へのアイロニーか。
そんなダミッドを、少女の姿をした悪魔が誘う。

恐怖というよりも、全編に退廃的な美しさが漂う。
あ~、これぞまさしくヨーロッパの文化の香り(笑)
でもやっぱり、白い服着た、金髪の女の子は怖かった。
薄笑いを浮かべた目元や真っ赤な唇の禍々しさは
絶対夢に出てきそうです。
このラストシーンが、半世紀近く経っても
私の記憶の底に張り付いていたわけが分かったような気がします。



後妻業の女

直感で映画を選ぶと、息を詰めて観るような映画ばっかりに
なるので、さすがに体にもメンタルにも良くない。
ということで「明るい映画を」と、オンデマンドで
「後妻業の女」をチョイスした。

原作は黒川博行氏の「後妻業」 で原作は未見。

監督、脚本 鶴橋康夫
出演 大竹しのぶ 豊川悦司 尾野真千子 etc.

実話をベースにした小説や映画は多い。
前回の「葛城事件」もそうだし、「怒り」や「凶悪」
感動系の映画にもたくさんある。

そんな中「後妻業の女」は、「日本で一番悪いやつら」と同様の
コメディ仕立て。結婚相談所のパーティで知り合った資産家の
老人と結婚し、財産を乗っ取る女小夜子(大竹しのぶ)
彼女を裏であやつる黒幕で、結婚相談所の所長柏木
(豊川悦司)。父親の遺産を取られて、小夜子の犯罪を暴こう
とする姉妹(長谷川京子、尾野真知子)
それに探偵やら、小夜子の息子のチンピラやらが入り乱れて。

舞台が大阪ということもあって、会話も、しゃべり方も、登場人物
の性格も、すべてが直球勝負で、妙に生々しい。だから、何だか
いい人なんか一人もいないように思えてしまう。

この映画は、悪事を働く人間だけにスポットを当てるのではなく
一見被害者に見える人間たちの側の行動や感情も
平等にリアルに描くことで
すべての人間に共通する「業」を描いてるのかなと思う。

いい年をして、色仕掛けにだまされる老人も
たいして親の世話をしていないのに、財産をとられたとたんに
血相変えて取り戻そうとする子供たちも
そんな人間の弱さと、法の盲点につけこんで
金をむしりとろうとする詐欺師たちも
愚かさと醜さ、つまり業の深さでは似たりよったり。
だから滑稽でもあり、ちょっと哀れでもある。

しかし、観る者のそんなチンケな感傷を吹き飛ばすのが
殺されても死なない、無敵の女
後妻業界のレジェンド小夜子。
いやあ、大竹しのぶさん、すごかった!

そして、クールでかっこいい美青年トヨエツは
もうどこにもおらず、いやらしい、中年のおっさんの
トヨエツがいました(泣)でも、もうかっこつけなくていいから
トヨエツ楽しそうだったなぁ!


葛城事件

封切りの時から気になっていた映画だったので
「葛城事件」を、オンデマンドで鑑賞。

監督 赤堀雅秋
出演 三浦友和 南果歩 新井浩文 若葉竜也 田中麗奈

親から受け継いだ小さな金物屋を営む葛城清(三浦友和)は
マイホームを建て、妻(南果歩)と、長男保(新井浩文)
次男稔(若葉竜也)を育ててきたが、支配的、高圧的な清の
もとで、内向的な保は会社をリストラされ、妻子を残して自殺。
父親に反抗した次男は、引きこもりになり、無差別殺人を犯す。

この映画ほど、観ている人の立場<男性(父親)女性(母親)
子供>で、感想が分かれる映画も珍しいんじゃないだろうか。
ヤフーのレビューに「自分の育った家庭とそっくり」という感想
があったのもうなずける。

長男の自殺とか、次男の無差別殺人とか、センセーショナルな
事件の部分を除いてみると、案外、どこにでもあるような家族の
風景、親子のやり取りが描かれているからだ。

葛城清という父親は、本当にそれほどどうしようもない、ひどい
男なんだろうか。「男は、家を建て、一国一城の主として、家族を
食わせていく」ことを最高の価値と考え、それが清のプライドの
拠り所でもあった。男として、夫として、自分はちゃんと務めを
果たしているのだ。それの、どこが悪い、何が間違っている。

「俺が一体何をした」

清のこの言葉は、開き直りではなく、彼は本当に分からないのだ。

そのわけを、とても象徴的に表しているシーン。
それが、リストラされた長男が、行く場所がなくて、父親の店に
顔を出す場面。彼は、失業したことを誰にも言えず、父親にも
「営業の途中で寄った」と嘘をつくのだが、いつも父親が
店番をしている椅子に座る。ほとんど客が来ないさびれた店と
並んだ商品の隙間から見える、ほんのわずかな表の風景。
清は、生涯、たったそれだけの世界の中で生きてきた。この
あり得ないくらい狭い世界で。

葛城清という男の人生を、観る者に一瞬で訴えかける、この場面。
これが映画の凄さであり、面白さだなと思う。

社会が豊かになり、均一なものになるに従って
住宅メーカーのCMに出てくるような「理想の家族」という
イメージが広がった。地域社会の縛りがゆるくなった代わりに
「家族」の呪縛が、家族を苦しめていると言ったら言い過ぎだろうか。
ぶっちゃけ、家族のコミュニケーションって、実は難しいのに。

そう言えば「渇き」という映画の中でも
役所広司さんが楽しそうに演じていた、イカレた刑事のオッサンの
「理想の家族」の幻想シーンが、笑ってしまうくらい凄かった。

「葛城事件」を観て、葛城清のどこがどうおかしいのか
(息子を殺そうとしたことは別として)もう一つピンとこない方は
家庭崩壊の危険性があるので、気をつけてくださいね(笑)

キングコング 髑髏島の巨神

「猿の惑星」にハマってから、お猿さんフェチになったという
わけではないのですが、去年の「シン・ゴジラ」で
「コレジャナイ」感があったので、そのリベンジと
何より監督さんが「地獄の黙示録」が好きらしいということで即決。

監督 ジョーダン・ボート・ロバーツ
出演 トム・ビドルストン ブルー・ラーソン
    サミエル・L・ジャクソン etc

実際に観に行けたのは昨日だったけど
いやあ、面白かった。大満足。
そして、確かに、全てにおいて
「猿版 地獄の黙示録」だった。

「地獄の黙示録」は、私が今まで観てきた映画の金字塔。
あれを超える映画は、生きている間にはもうないと思う。

洋画も邦画も、旧作のリメイクというのは結構あるけれど
オリジナルが面白ければ面白いほど
リメイク版をみようという気にはあんまりならない。

しかし、これは……
「そうか、その手があったか」という感じだった。
映像面だけ見ても、監督が「地獄の黙示録」のどの場面が
好きなのかが、一目瞭然。

もちろん怪獣映画が大好きという人は
冒頭からキングコングが大暴れし
その後も息つくひまもなく、次から次へと
巨大でユニークな怪獣が登場する、大盤振る舞いの豪華さ。

一方私のように「地獄の黙示録」大好きという人間には
いたるところに「地獄の黙示録」に対するオマージュが
感じられて、大感激しました。

あれだけ、世間の評判も、評価も高かった
「君の名は。」にも「この世界の片隅に」にも
アカデミー賞をいくつか取った「ラ・ラ・ランド」みたいな映画にも
ぴくりとも反応しない、貧弱な私の感性ですが
とりあえず「これはテレビのサイズで観たらさみしい」という映画だけは
今年もなるべく映画館で観たいなと思っています。
プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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