悪の法則

半年くらい前に、レンタルで一回観た。
「これは面白い」と思って
昨日オンデマンドで二回目を観た。

悪の法則(2013)

監督 リドリー・スコット
出演 マイケル・ファスベンダー キャメロン・ディアス
    ブラッド・ピット

注意力や記憶力が貧困なので
最初に観た時はストーリーを追うのに必死で
細部を覚えていない。
この映画は、ものすごく不親切な作りなので
細部が分からないと、全体を組み立てることができない。

二回観て、六割がた流れはつかめたけれど
「めちゃくちゃやなぁ、これ」と思う。
「それはないやろう」という流れで
主人公や周辺の人物が、回避しようのない
絶望的な状況に追い込まれていく。
それなのに、なんで面白いかというと
その問答無用のイケイケ感がたまらない。

カウンセラーと呼ばれている弁護士(マイケル・
ファスベンダー)は、愛する女性と幸せに
暮すために、ドラッグの密売に一枚噛んで
仲介料を手に入れようとするが、ドラッグが
何者かによって、輸送中に奪われたことで
メキシコの闇の組織から命を狙われるはめに。

愛と金のために、踏み込んではいけない世界に
足を踏み入れてしまった男の悲劇?
どんな常識も理屈も通用しない、裏社会の
恐ろしさ?

もちろんそれもあるけど、それらを超えて
インパクトがあるのが、究極の肉食女子
マルキナ(キャメロン・ディアス)の存在感。
気の弱い男性が観たら、特にフェラーリと
ファックする展開なんかは、トラウマになって
下手をすると女性恐怖症になりそうだなと思う。

その話をしている時のライナー(ハビエル・
バルデム)の表情が、その衝撃の大きさ
を語っている。ほんとなら、そのものずばりの
究極のエロのはずなのに、ものすごく怖い
ものを見て魂を抜かれたみたいな感じなのだ。
多くの男性が、女性に抱いている甘やかな
幻想を粉々に打ち砕くだろうことは間違いない。

そもそもドラッグ強奪の黒幕は彼女であり
色と欲に絡め取られた男たちは、次々に破滅していく。
ゴア描写も結構あって、血も涙もない裏社会も
もちろん恐いけど、やはり何が恐いといって
だますほうも、だまされるほうも
そして色と欲に目がくらんだ主人公に
理解できるとも、さほど役に立つとも思えない
抽象的な警告や格言を発するだけで
成り行きを傍観している人たちも
すべてひっくるめて、人間というものの底の知れなさが恐い。
つまり<いい人>が一人も出てこないのがgood!

ぐだぐた余計な説明を山ほど盛り込んで
逆に何が何やらになっていく映画が多い中で
この説明不要で、論理性も整合性も
ほぼスルーして突っ走る、問答無用感にシビれました。

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呪怨 映画版

呪怨(2003年)

監督・脚本 清水崇
出演 奥菜惠 津田寛治 伊東美咲

「女優霊」(1996)と「呪怨」(2003)
個人的には「女優霊」のほうが好きだ。
ただ映画としては、キャスティングなんかも
地味だし「女優霊は怖くない」という人も多い。

けれど「女優霊」は、普通のホラー映画
と違って「見えない怖さ」
あるいは「見せない怖さ」に
チャレンジしている作品のように思えるので
私としてはそこが面白かった。

「呪怨」は「リング」と同様に
非業の死を遂げたヒロインが
幽霊になって恨みを晴らすという
基本的な骨組みはとても古典的だ。

しかし「リング」はテレビとかビデオとかの
現代的なデバイスを媒体にすることで
恐怖をより現実的に感じさせることに成功した。

一方の「呪怨」は
ホラーの通念を裏切って「戦わない」
あるいは「戦えない」という稀有なホラー。
いや、戦おうとする人物はいるのだが、すぐ負ける。
伽椰子最強、伽椰子無敵という感じなのだ。

それとやっぱり「俊雄くん」の存在。
あの強烈な、一歩間違うとギャグになりそうな
ビジュアルに加えて、果たして彼は死者なのかという点も謎。

そして何といっても大好きなのがラストシーン。
無人の街に、訪ね人の張り紙があちこちはためいている。
「そして誰もいなくなった」状態。
神無き世界で、伽椰子に勝てる者はいなかった。

こういうオチがつけられるところが
日本映画ならではの良さだよなぁと嬉しくなった。
対照的に「女優霊」は
最後の最後で、やっぱり出しちゃったんですよね(笑)
で、このエンディング勝負で「呪怨」の勝ち。
まあ、完全に私の趣味なんですけど。

最初のビデオ版と映画版では相当クオリティが高かった
「呪怨」も、続編が出来るたびにどんどん?な感じに
なっていき、最近100人スミス状態の敏雄くんの画像を
見たような気がするのは、私の錯覚か?
さらに「伽椰子VS貞子」という不穏な噂まで。

頼むから、数を増やせば怖くなるだろう
怖いのと怖いのを組み合わせたら
怖さが二倍になるんじゃないかと考えるような人が
ホラー映画を作るのは止めてくれ~!




屍者の帝国

「屍者の帝国」を観てきた。
3館くらいは上映があるだろうと余裕こいてたら
福岡で上映されるのは1館のみ。

2012年に円城塔さんの「道化師の蝶」を読んだのが
きっかけで、伊藤計劃さんの名前を知り
伊藤さんのファンになった。考えてみたら
この十年ほどで、いわゆる芥川賞取った小説
読んだのはこの「道化師の蝶」だけ。

しかし伊藤さんは、2009年に病気のために
亡くなられて、新作が発表されることはもうない。
遺稿となった30枚の原稿とプロットをもとに
盟友の円城さんが完成されたのが「屍者の帝国」だ。

伊藤さんと円城さん、どちらのファンでもある私は
公開されるのを心待ちにしていたのだけれど
上映館の少なさに、世間的にはマイナーなのかと
あわてて観にいくことにしたわけだ。

19世紀末。死人に疑似霊素のデータをインストール
して屍者としてよみがえらせ、労働や軍事に従事
させることが、世界的に普及していた世界。

その百年前に、フランケンシュタイン博士は
生者と同等の知能があり
言語を話すことができる屍者を作りだしていた。
その人類初の屍者ザ・ワンと彼を生みだした技術を
記したと言われる「ヴィクターの手記」を追って
ロンドン大学の医学生ワトソンは世界を駆ける。

こんなお粗末な要約を書くと、激怒されそうなくらい
原作は、複雑なディディールを組み上げ
なおかつ歴史上、文学上の有名人が
それこそオールスター総出演状態で出てきて
いったいこれをどんな風にアニメにするのか
内心少し心配でもあった。

結論から言えば、映画は原作を一部
大きく改変してある部分がある。
けれどその改変によって、原作を読んでない人でも
全体を整合性のあるストーリーとして
何とか理解できるような仕上がりになっている。
そして、その改変に込められた
このアニメを作った人たちの、伊藤計劃さんに
対する思いも、ファンには感じることができる。

そういう意味では原作にこだわりさえしなければ
完成度の高い作品になっているように感じた。
映像も美しい。止め絵が背景に使われているのも
以前観た「モノノ怪」で、止め絵を効果的に使った
独特の美しさを感じたので、ありだと思えた。
特にアフガニスタンの雪山でのシーン。
誰もが屍者になれば、苦しみも悲しみも
憎しみもなく、静かに平和にくらしていける。
その思いから、自らも生ける屍者となり
愛する人たちをも屍者化することで
雪深い山奥に屍者の帝国を作ろうと企てた
アレクセイ・カラマーゾフ。
ここが一番のツボでした。
(原作でもアニメでも、ちょっと
「地獄の黙示録」を連想しましたけど)

映画は、あまり難しく考えないで
伊藤さんと円城さんが作りだした
荒唐無稽でスチームパンクな
ダークファンタジーの世界の一端を
楽しんでもらえたらいいなと思います。

*ブログのHNをツイッターと同じ
田中偲に統一しました。
フォローさせていただいている
またフォローしてくださっている皆様
ありがとうございます!!









スワロウテイル

先日買い物をしていたら「あいのうた」が流れてきた。
「うわぁ、懐かしい」と思ったら
YEN TOWN BAND19年ぶりの復活、活動再開らしい。

YEN TOWN BANDといえば「スワロウテイル」(1996)

    監督・脚本 岩井俊二
    出演 CHARA 伊藤歩 三上博史

円が世界で一番強かった時代。一攫千金を夢見た大勢の
移民がうごめく都市は円都(イエンタウン)と呼ばれた。
孤児になった女の子(伊藤歩)は、娼婦のグリコ(CHARA)
に引き取られアゲハと名づけられる。
グリコの恋人フェイホン(三上博史)の夢は、グリコを一流
の歌手にすること。そのために偽札造りに手を染めた
フェイホンは罠にはめられて捕えられる。

私にとっては三上博史が全てというような映画だった。
ちなみに、三上さんが出演したドラマのマイベストは
「この世の果て」です。
とにかく、これでもかというくらい暗い話好きです。

金が全てという世界で、金も力もない無力な
人間の夢など絶対にかなうはずがない。
違法行為までやって、チンケな金を手にしたところで
そんなものは、大きな力によって叩き潰されてしまう。

この映画は、SFチックなディストピアを舞台に
はかない夢に賭けて敗れた
哀れな人間の生き様を描いて、とても美しい。
三上さん以外にも、出演している俳優陣が凄い。
岩井俊二監督の映画で、こういう社会派の匂いがして
しかも過激な作品は、割りと珍しいと思う。

実は、この映画を観るまではCHARAの独特の声も
歌い方もあまり好きではなかった。
けれど、音楽が映画の雰囲気にぴったりだったら
というより、映画が自分のツボだったら
とたんに嫌いなものも好きになるという
とても影響されやすい性格なもので。

「シド&ナンシー」観て、ピストルズ最高と思い
つい先日は「チャッピー」観て、それだけはないだろうと
思っていた「ヒップホップちょっといいかも」と思った私。
あとはクラシックを残すのみです。

それにしても、この時期はCHARAとかUA
Cocco、鬼塚ちひろ、そしてデビューしたばかりの
椎名林檎など、個性的な女性シンガーが
大活躍した、そしてとてもいい歌が作られてた
いい時代だったなぁと、久しぶりに「あいのうた」
をしんみり聴きながら思っています。




     
プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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