死神の浮力

千葉さんは死神だ。
彼は、死ぬことが決まっている人間の身辺を
一週間調査して、問題がなければ
調査部に「可」の報告をする。
すると対象者は8日目に死亡する。
ただし自殺と病死は死神の管轄ではないらしい。

伊坂幸太郎さんの小説は、若干合う合わないが
あるが、千葉さんが活躍する?「死神の精度」と
「死神の浮力」は面白い。

本城という若い男が、山野辺という作家の小学生の
娘を殺害する。しかし本城の犯罪を立証する
確実な証拠はなく、本城は無罪で釈放される。
本城が真犯人であることを知っている山野辺
夫妻は、司直の手には委ねず、自分たちで本城
に凄惨な復讐をすることを決心した。

そして、山野辺氏の調査のために、夫妻に近づいた
千葉さんは、結果的に夫妻の復讐を全面的に
手助けするということに。

「死神の浮力」は、いわば「必殺仕事人」の
ダークファンタジー版だ。
「目には目を、歯には歯を」それのどこが悪い?
私も心からそう思う。
何の罪もない肉親を、無残に殺された人間の
悲しみ、怨み、憎しみは、犯人が法で裁かれたから
といって、和らぐものでも、まして消えるものでもない。

不公平も、不平等も、不合理も
いつの時代も、どんな社会にもあって
不満や怒りを抱えるのは人間の常だ。
けれど、それで争いを始めたら
至るところ死人だらけになって、さすがにマズい。

だからそれを、物語とか、映画とか、音楽とかに
変換して追体験することで、生な感情を浄化させる。
それは芸術といわれるものの、大切な役割なのだ。
だから、そういうジャンルまでが、建前だらけ
きれいごとだらけになってしまったら
それはそれで問題があるように思うのは私だけ?

伊坂幸太郎さんの小説は、死神シリーズを
含めて、不道徳だったり、非常識だったり
反社会的だったりする設定や展開も多いけど
ほとんどの作品が、ある意味異世界ファンタジーだから
後味は悪くない。

その中でも、特にこの死神千葉さんが好きなのは
死神の視点から、人間界のすべての事象を見るので
どこかととんちんかんでずれてておかしい。
本城のことを「あの男は、良心がない人間なんですよ」
という山野辺に、良心を両親のことだと思って
「クローンというやつか」と言ったりする。
しかも千葉さんが人間界で仕事をしている間は
いつも雨という、いかにもなロケーションも素敵です。

死神シリーズ、ぜひもう少し続けてほしいと思います。



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桐島、部活やめるってよ

いい年をして、十代の感性に共感できるのかという
不安もあったし、先に観た家族の評価がイマイチだった
のだけれどヒタナカさんの「カゲヒナタのレビュー」では
2012年度のベスト映画の2位という高評価。

もしかして、視点を変えて観たら、すごく面白いのか
というのが、ずーっと気になっていたので、観てみた。

「桐島、部活やめるってよ」(2012)

原作 朝井リョウ
監督 吉田大八
出演 神木隆之介、橋本愛、東出昌大 etc

で、観終わって「ああ、これ映画好きな人は好きだわ」
と思った。タイトルになっている「桐島」なる人物が
結局最後まで登場しない設定とか、同時進行の出来事を
登場人物ごとに分ける見せ方とか、マニアの方が観たら
細かいところまで、うまく出来てると思われるのだろう。

私が一番好きだったのは、オタクな映画部の部長前田
(神木隆之介)が「鉄男」という映画を観に行った映画館で
同級生の美少女かすみ(橋本愛)と出会うシーン。

映画好きの人間が、そうでもない普通の人と、映画の話を
する時の、ものすごく微妙な気持ちの揺れみたいなもの。
「どこまでなら話しても大丈夫かな」
「どんな話だったら知ってて、のってくれるかな」
「こんなこと言ったら引かれないかな」
しかも相手がすごく可愛い女の子なのに、自分と同じ
ちょいとマニアックで、結構グロい映画を観てることで
<気が合うかも、趣味が合うかも>と、テンションMAX。
いやあ「分かる、分かる」と、そこまで煎餅かじりながら
ぼやぁっと観てたのが、一気にポイントがはねあがった。

その場面を含めて、他の生徒たちに見下されたり
冷笑されたりしている、映画部が奮闘するシーンは
最高だった。その他の、スポコン要素とか、恋バナとかは
まあ、普通というか何というか。

でも「桐島」なる生徒を追っかけて狂奔する
桐島の友人たちとか彼女とかの集団見てると
ちょっと先日からの某アイドルクループ解散騒動を
連想してしまった。たとえ<ソレ>が虚像だろうが
はたまた幻想、幻覚の類いだろうが「いる」ということが
それほど重要なことなのだろうか。そして、彼らは
いったい桐島に何を求めているのだろう。

私には、時代遅れの8ミリカメラの良さについて
彼なりに熱く語る前田を含め
ホントに楽しげにゾンビ映画作りにチャレンジする
映画部員たちのほうが、よほど揺るぎのない生を
生きているように感じられたのだ。

前田の、切ない片思いは、あっという間に撃沈されて
してしまうけど、彼はちゃんと映画の中で(妄想だけど)
リベンジを果たす。彼の中では、やっぱり映画への愛が
恋愛に勝ってる。それを、オタクの負け惜しみなんて思う人は
映画の本当の面白さを知らないんだろうなと思う。

でも、これ、映画部が出てくる話じゃなかったら
たぶん途中で止めてた、そういう映画でした。


PSYCHO-PASS

気がつけば一月ももう半分を
過ぎてしまいましたが
今年もよろしくお願いします。

昨年映画館で観た映画は
「PSYCHO-PASS劇場版」
「チャッピー」「屍者の帝国」
「ハーモニー」の4本だけ。

つくづく映画ブログなんぞ書くのは
おこがましい気もしますが
人間って「これ面白~い」と思ったものは
つい誰かにそのことを話したくなるものなので
今年も新旧取り混ぜボチボチやっていこうと思います。

で「PSYCHO-PASS」ですが、2012年に放送された
第1期、2014年の第2期、そして劇場版。
その中で一番面白かったのは第1期。
総監督は「踊る大捜査線」の本広克行さん。
近未来SFの刑事ものです。

人間の心理状態や性格傾向を計測し
数値化することができるシビュラシステムによって
社会の治安が守られている2112年の日本。
公安局の捜査官たちは、シビュラシステムと
連動するドミネーターという特殊な銃によって
犯罪者の犯罪係数を計測し、制圧することができる。

近年理解不能な理由で、人を殺すような人間が
増えているから「これいい!」と心から思った。
オリンピックなんかに馬鹿みたいな大金使うのをやめて
このシビュラシステム&ドミネーターを実用化してほしい。
まあ犯罪係数高かったら、一瞬で粉々に粉砕されるけど
ドンマイ、ドンマイ。細かいことは気にしない。

ところが、このドミネーターが反応しない人物がいる。
数々の猟奇殺人者を、裏で操る槙島聖護。

金とか物とか権力とか、あるいは性的な欲望など
なんらかの人間的な欲望が動機の悪ではない
悪のための悪、絶対的な悪を表現しようとした
魅力あるキャラクターと思われたのだが…。
残念ながら、第1期の最後に
執行官の狡噛慎也(こうがみ しんや)に
よって射殺されて終わり。

映画版は、見ごたえのあるアクションシーンも多くて
なにより狡噛慎也復活で
狡噛さんファンには、楽しめたのではないかと。
でも…槙島さんを殺さないでほしかった(まだ、言うか)
内容がどうこうというより
私にとっては、ただただ槙島聖護ラブというアニメでした。


プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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