青い春

監督さんとか俳優さんで、先入観を持ったり
あまりえり好みしないように気をつけてはいるが
それでも、一番最初に観た映画の印象で
「この監督さん好き!」と感じることはある。
そんな一本が「青い春」

青い春(2001)

監督 豊田利晃
出演 松田龍平 新井浩文

朝日高校という男子校の屋上に、不良グループが
集まっている。ベランダの枠の外側に立って、手を
叩きながら、柵から手を放すベランダゲーム。そこで
8回という新記録を出したのが九條(松田龍平)
このゲームの勝者が、学校をしきるというルールが
あるのだが、九條はそういうことに興味がない。
九條の友達の青木(新井浩文)は、そんな九條に
苛立ち、自らベランダゲームに挑んで…

とにかく新井浩文さんが全てという映画だった。
無表情無感動で、スカした感じの九條を慕い
まとわりつく青木。長髪で、暗くて、おとなしい
どこにでもいそうな高校生。けれど九條が
ボスになる気も、学校をしきるつもりもないこと
を知って、青木は眉も髪も剃り上げ、別人になる。

青木の、九條に対する思いは、友情なんていう
生易しいものじゃない。憧れと対抗意識が
どうしようもなくこんがらかって、ひと言で言えば「愛」
それもものすごく面倒くさい愛情。
男の人が観たら、そういう風には感じないのかな。

九條に、自分の理想の男になってほしいと
願うが、相手にされない。ならば自分がと
外見をどれほど強面にしてみたところで
九條を超えることができないことを、誰よりも
青木自身が知っている。だから切ない。

ベランダに立ち夜明けを待つ青木。
彼は、命を賭けて九條に勝てることを見せつけ
たかったわけじゃない。
「俺はどうにかしてお前に振り向いて欲しかった」
青木の思いは、最後の最後に通じる。もう取り返し
がつかない形で。

九條と青木だけではなく、彼らを取り巻く若者たちの
どうしようもなくヒリヒリした、やり場のない空気に
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの音楽が
はまりすぎるくらいはまってました。

というわけで、豊田監督は「ナイン・ソウルズ」も
本当に救いがないんだけど、私には美しく感じられた
という意味で、大好きな映画の一本です。

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Ghost World

家族に勧められて「Ghost World」を観た。
ミニシアター系の映画には疎いので
自分では絶対にたどりつけないタイプの映画。

Ghost World (2001) 米
監督 テリー・ツワイゴフ

原作はオルタナ・コミック(そんなジャンルがあるのを
初めて知った)

イーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・
ヨハンソン)は、高校でも浮いた存在で
家族ともうまくいってないけど、二人は
大の仲良し。高校を卒業して、進学もせず
仕事もせず、なんとなくブラブラしていた二人。

特にイーニドは、友達も親も社会も、すべてのものを
馬鹿にしているが、実は勉強もバイトも何もかも
中途半端で、うまくやることができないダメ人間。
彼女の傲慢さは、周囲とうまく折り合いをつけて生きて
いくことができない不安定さの裏返しでもある。

二人は、新聞に出会い系の広告を出した、さえない
中年男シーモア(スティーヴ・ブシェミ)にいたずらを
仕掛けるが、イーニドは、次第にブルースレコードの
コレクターであるシーモアに親近感を抱くようになる。

生きづらいのは、自意識過剰な若者だけではない。
変人だけど、実はすごくいい人なのに
イーニドに振り回されたあげく、すべてを失ってしまう
非モテな中年オタクのシーモアがかわいそう過ぎる。

この映画のエンディングは謎に包まれていて、最後まで
観て初めて、この映画のタイトル「Ghost World」の意味を
改めて考えてしまうような作りになっている。

廃線になったバスの停留所にいつも座って
バスを待っているいる老人がいる。
レベッカともシーモアとも訣別、というか、全部自分でぶっこわした
イーニドの目の前に、来ないはずのバスがやってきて
老人はそのバスに乗って行ってしまう。
そしてイーニドが無人のベンチに座っていると、またバスがやってくる。

今まで観てきた世界はすべて現実ではなく、パラレルワールドなのか。
それとも、イーニドのような若者や、現実に上手に迎合できない
シーモアのような人間が、生きる意味を見いだせない社会を
そういう言葉で表現しているのか。
イーニドが来ないはずのバスに乗って去っていくラストが
意味するのは彼女の死か、新しい世界への旅立ちか。
観た人がどんな風にでも自由にとらえてよいのだろうと思います。

たとえこのラストがバッドエンドなのだとしても、映像や音楽が
とても美しいですから、心地いい余韻を残してくれました。
思わずブキミと変換しそうになった、ブシェミさんの
なんとも気持ちの悪~い雰囲気もハマると癖になりそうです。


プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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