ハゲタカ(ドラマ)

真山仁の原作を、NHKがドラマ化して映画にもなった。
映画版は観たが、原作は未見。

出演は 大森南朋 柴田恭兵 栗山千明 松田龍平 etc.

元銀行員の鷲津政彦(大森南朋)は、銀行を退職後渡米。
アメリカの投資ファンドで働き、ファンドマネージャーとなって
帰国。バブル崩壊後の日本で、非情な企業買収に乗り出す。

私のような庶民というか低所得層(貧乏人とも言う)には
縁のない経済の世界のあれこれが、ざっくり分かって
とても面白かった。そして何よりもこのドラマで一番惹き
つけられたのが田中泯という俳優さん。

経営難に陥った総合電機メーカー大空電機の技術者で
特殊なレンズを磨くプロフェッショナル。大空電機の老いた
創業者大木を演じた菅原文太さんも、渋くて素敵でしたが
田中泯さんの迫力というかオーラは、とにかく凄かった。
なんかこう鳥肌の立つ感じだった。

田中泯さんは、もともとはダンサーなのだが、舞踊家とか
俳優とかのジャンルに縛られず、自らの肉体を駆使して
なにものかを生み出す行為の一環としてダンスも演技も
あるという自由な思想が、あの独特の存在感の所以かな
とも思う。

その後「田中泯」という名前を見かけると、ドラマも映画も
観るようになった。ドラマでは「竜馬伝」映画では「メゾン・
ド・ヒミコ」「外事警察その男に騙されるな」など。最近では
NHK朝ドラの「まれ」にも出演されていた。やはり一度観た
ら忘れられないくらいインパクトがあった。

個人的に一番好きなのは「メゾン・ド・ヒミコ」なのですが
これがまたしてもゲイの世界の話で、あまりBL好きと思われる
のもアレなので(嫌いではないですが)今回は田中泯さんと
の出会いになった「ハゲタカ」を。

でもここだけの話、田中泯さんってスーツ似合わない。
やはり画一化されたファッションの象徴であるスーツで
包み込むのには無理がある、肉体と精神の持ち主なの
かもしれません。




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マークスの山

映画と同様、小説も恋愛物は数えるほどしか
読んでないが、これはその中の一冊。

高村薫さんの「マークスの山」

「これ、恋愛物か?」と突っ込まれそうだが
私としては恋愛オールマイベストの上位にある。

南アルプスの夜叉神峠で、排ガス心中をした夫婦の
子どもが保護される。その少年水沢裕之は、事故の
後遺症で精神に障害をきたし、病院や刑務所への
出入りを繰り返した後、連続殺人を起こす。
そして、犯人を追うのは、お馴染みの合田雄一郎。

裕之の意識は、三年周期で、明るい山と暗い山
にあり、明るい山の時期が来ると別人格になる自分を
彼は「マークス」と名付けた。

犯罪小説だが、捜査の過程と、水沢(マークス)の
エピソードが交互に語られるので、犯人は分かる。
しかし水沢が殺した人間たちの接点を探すうちに
過去に隠蔽され葬られた、まったく別の事件が
浮かび上がってくる。

看護婦の真知子は、幼い頃から独りぼっちだった水沢を
ただ一人温かく受け入れ愛してくれた女性。
彼女が撃たれたことで、全てに絶望した水沢は、独り山へ向った。
真知子の服とサンダルを持って。
やがて、山頂で凍死している水沢が発見される。

「水沢裕之の眼球は、雲海に浮かぶ富士山景を真っ直ぐに
見据えていた。その魂を犯し続けてきた《マークス》から
逃れ逃れてここに辿り着き、真知子と一緒に、一晩待ちわび
ていた天上の夜明けが、もうそこまで来ていた。」

このラストに泣きました。高村薫さんの小説は
この最後の数行あるいは数ページのカタルシスを描くために
これでもかというくらい細密なディテールを組み上げてあって
読み手にとってはそこがたまりません。
苦行の果ての快楽というかなんというか(笑)

ただ文庫版では、私が一番好きなこの部分が改訂されて
抒情性を抑えた、サラっとした感じになっていたので
私はハードカバーの単行本のほうが好きです。
ドラマにも映画にもなりましたが
このとおり、半端なく原作に入れ込んでいるもので
やはりどちらも物足りなさがありました。



火の魚

映画でもドラマでも、昔から恋愛物は
それほど好きではない。
たまたま観ていて「あっ、これちょっといいかも」
と思うくらいで、たいして思い入れがない。

けれどそんな私でも、稀にどストライクというのに
巡り合えることがある。
その一本がこの「火の魚」

原作は室生犀星 
2009年 NHK広島放送制作のドラマ

出演 原田芳雄 尾野真千子

広島の小さな島に住む老作家村田(原田芳雄)のもとに
東京から、若い女性編集者折見とち子(尾野真千子)が
原稿をもらいに通ってくる。偏屈で孤独な村田は
最初はとち子が気に入らず、何かと難題をふっかけるが
次第に彼女の編集者としてのセンスや人柄に魅かれていく。
けれどとち子は、何も言わずに突然村田の許を去った。

やがてとち子が、がんで入院していると知った村田は
白いスーツ姿で、抱えきれないほどの真っ赤なバラの
花束を抱いて船に乗り、とち子の病院に向かう。

「火の魚」というタイトルは、自分の本の装丁を、金魚の
魚拓にしようと思いついた村田が、とち子に魚拓を
作ることを命じて、とち子が金魚を殺し魚拓にする。
その息詰まるような緊迫感のあるシーンから来ている。
村田は、とち子が現れなくなってから全てを理解し
自分の心の奥底に封じ込めていた想いに気づく。

村田から、バラの花束を受け取ったとち子が言う。
「先生、私今モテている気分でございます」
村田がつぶやく。
「あながち気のせいでもないぞ」

まさに、これだよなあ、これという感じで
柄にもなくこみあげるものがあった。
愛してるという言葉もなければ、抱擁もキスもない。
病気だから悲しいというようなやり取りも涙もない。
余命がなんとかというような野暮な話もない。
それでも私には「至高の愛」と呼べるような
究極の恋愛ドラマだった。

俳優さんも、これしかないというベストなキャスティング。
原田芳雄さんが亡くなられた時に、追悼特集で放送され
DVD化もされているようなのがうれしい。
制作からずいぶん時間が経って、あまり日の目を見ること
もない作品ですが、もしもそういう機会があれば
またどなたかの、目や心に留まればと願っています。


プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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