屍者の帝国

「屍者の帝国」を観てきた。
3館くらいは上映があるだろうと余裕こいてたら
福岡で上映されるのは1館のみ。

2012年に円城塔さんの「道化師の蝶」を読んだのが
きっかけで、伊藤計劃さんの名前を知り
伊藤さんのファンになった。考えてみたら
この十年ほどで、いわゆる芥川賞取った小説
読んだのはこの「道化師の蝶」だけ。

しかし伊藤さんは、2009年に病気のために
亡くなられて、新作が発表されることはもうない。
遺稿となった30枚の原稿とプロットをもとに
盟友の円城さんが完成されたのが「屍者の帝国」だ。

伊藤さんと円城さん、どちらのファンでもある私は
公開されるのを心待ちにしていたのだけれど
上映館の少なさに、世間的にはマイナーなのかと
あわてて観にいくことにしたわけだ。

19世紀末。死人に疑似霊素のデータをインストール
して屍者としてよみがえらせ、労働や軍事に従事
させることが、世界的に普及していた世界。

その百年前に、フランケンシュタイン博士は
生者と同等の知能があり
言語を話すことができる屍者を作りだしていた。
その人類初の屍者ザ・ワンと彼を生みだした技術を
記したと言われる「ヴィクターの手記」を追って
ロンドン大学の医学生ワトソンは世界を駆ける。

こんなお粗末な要約を書くと、激怒されそうなくらい
原作は、複雑なディディールを組み上げ
なおかつ歴史上、文学上の有名人が
それこそオールスター総出演状態で出てきて
いったいこれをどんな風にアニメにするのか
内心少し心配でもあった。

結論から言えば、映画は原作を一部
大きく改変してある部分がある。
けれどその改変によって、原作を読んでない人でも
全体を整合性のあるストーリーとして
何とか理解できるような仕上がりになっている。
そして、その改変に込められた
このアニメを作った人たちの、伊藤計劃さんに
対する思いも、ファンには感じることができる。

そういう意味では原作にこだわりさえしなければ
完成度の高い作品になっているように感じた。
映像も美しい。止め絵が背景に使われているのも
以前観た「モノノ怪」で、止め絵を効果的に使った
独特の美しさを感じたので、ありだと思えた。
特にアフガニスタンの雪山でのシーン。
誰もが屍者になれば、苦しみも悲しみも
憎しみもなく、静かに平和にくらしていける。
その思いから、自らも生ける屍者となり
愛する人たちをも屍者化することで
雪深い山奥に屍者の帝国を作ろうと企てた
アレクセイ・カラマーゾフ。
ここが一番のツボでした。
(原作でもアニメでも、ちょっと
「地獄の黙示録」を連想しましたけど)

映画は、あまり難しく考えないで
伊藤さんと円城さんが作りだした
荒唐無稽でスチームパンクな
ダークファンタジーの世界の一端を
楽しんでもらえたらいいなと思います。

*ブログのHNをツイッターと同じ
田中偲に統一しました。
フォローさせていただいている
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ありがとうございます!!









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思い入れが強すぎたのか…。

こんにちは。
カリメン2号です。

『屍者の帝国』を観て来ました。
なかなか面白かったのですが、原作を読んでないので、何とも言い難いですね。
所々ではありますが、伊藤計劃の作品らしいセリフ回しが見れたのは、とても良かったです。
ただ、やはりSF作品ということもあり、ラストシーンを含め、21グラムの魂や結晶体の説明は不十分だったかと思います。
そして、主人公のワトソンとMが登場したことによって、大方の人は、ラストにホームズが出てくることも予想できたでしょう。
作り手の伊藤計劃に対する思い入れが、強く感じることは出来ました。
次回の『ハーモニー』や『虐殺器官』にも、期待できますね。

あばたもえくぼです

カメリン2号さん、コメントありがとうございます!

冒頭から、ワトソンとフライデーが親友という設定に
「ああ、なるほど」と思いました。そして、ワトソンに
伊藤さんのファンや円城さんの気持ちを、代弁させ
ているようなセリフが、随所に散りばめられていましたね。
私も暗がりでじ~んとしてました。

後半は、エンターテイメントにがんばり過ぎて
細かい説明を省いた、怒涛の展開になってしまい
分かりにくかったと思います。でも原作自体が
最後らへんは、円城さんのお家芸の言語物理学
みたいなのが盛り込まれていて、かなり難解です。
ですから、アニメでオチをつけるには、あれしか
なかったのかなと。あばたもえくぼですが(笑)

「ハーモニー」の公開は決まったようですが、制作
会社が倒産したとかで「虐殺器官」の公開が
心配な状況。無事に公開できるとよいのですが。

楽しみが増えました。

こんにちは。
カリメン2号です。

映画公開前から、原作と映画版は違うと聞いていたので、原作をまだ読んでいない自分としては、楽しみが増えました。
とは言うものの、『ハーモニー』の公開前に、小説の方も読んでしまわないとならないので、『屍者の帝国』はまだ後になりそうです。

『虐殺器官』を制作した会社が、倒産していたことは知りませんでした。
何としてでも公開していただけるよう祈っています。

どちらが先がいいか

「屍者の帝国」を観て、原作未読であれば
案外先にアニメを観るのもありかなと思えました。

アニメで全体のイメージをとらえて、細部を原作で
補完していくというか。その方法でも、どちらも
十分に楽しめるような気がします。

「虐殺器官」は、あの内容を本当に映像化して
大丈夫なのかという心配はありました。
グロいとか、そういうことではなくて、思想的と
いうか政治的にというか。

伊藤さんは、そのために、ラストは裏読みが出
来る仕掛けがしてあると言っておられたのですが
私にはよくわかりませんでした(笑)
公開延期が、公表されている理由の通りである
ことを願っています。
プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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