愛の嵐

「自分には映画の神様がついてるんじゃないか」と
思うことがある。引っ越しで大量のビデオを処分したが
昨年録画できるTVを購入して以降
「この映画があれば残りの人生を生きてける」と思える
映画が、サクサクと録画できていて、これもその一本。

愛の嵐 (1973)  イタリア 
        監督 リリアーナ・アヴァーニ 
        出演 ダーク・ボガード
           シャーロット・ランプリング

1957年 冬のウィーン。かつてナチス親衛隊の将校だった
マックスは、収容所で出会った少女ルチアに再会する。
彼女は、マックスが夜勤のフロント係として勤務する
ホテルに逗留した著名な指揮者の妻だった。二人の脳裏
によみがえる過去の記憶。

ロリコンで変態のおっさんが、いたいけな少女を弄んた挙句
結局は彼女の魔性に翻弄されて
二人して自滅した話だと思っている人もいるかもしれないが
私にとっては、これはある意味究極の純愛映画。

ルチアとの再会を、マックスは「天使に会った」と語る。
そして「ロマンチックね」と言う伯爵夫人に
「そうじゃない。あれは聖書の物語なのだ」と。

映画のポスターにもなった、ルチアがナチの将校たちの宴で
制帽をかぶり、上半身裸で、デートリッヒの歌を唄うシーン。
マックスは、歌い終えたルチアに、彼女が嫌っていた収監者の
生首を与える。そう、それは「サロメ」の物語の再現。

ルチアの反応を見守るマックス。まるで高価な宝石を
恋人にプレゼントする若者のような、高揚した表情が
ものすごく印象的。そしてルチアは、全編を通して
叫ぶでもなく、泣きわめくでもなく、あの美しい大きな瞳で
マックスを凝視する。

自分たちの犯罪の生き証人であるルチアを抹殺しようとする
ナチ残党のメンバーたち。極限の状況の中で、二人は破滅に
向かってひた走る。男も女も、決して相手に媚びることはなく
傷つけ合いながらも、唯一無二の存在。こんな愛の形もある
ことを、強烈に認識させてくれた作品。
センセーショナルではあったが、実は具体的な、性的な描写
はほとんどない。だから、この映画が、そういう視点だけで語
られるのは悲しい。

冬のウィーンの街並み、骨董品店、オペラハウス、物語の
舞台となる古いホテル、二人が死の道行きをする橋に至る
まで、すべての風景がどうしようもなく暗く、そして美しい。
何よりシャーロット・ランプリングの、これまた陰のある美
貌が他に類を見ないくらい美しい。
そして「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)「ベニスに死す」
(1971)そしてこの「愛の嵐」と、ダーク・ボガード
という俳優さんが、もっとも輝いていた季節でもあった。
オッサンくさいジャケットは、ちょっとアレな感じでしたが
軍服姿はすごく素敵です。

最近ヨーロッパの映画やドラマのほうへ、大きく関心が
振れているのは、多分「ルートヴィヒ」や、この「愛の嵐」を
数十年ぶりにじっくり観て、自分の感覚が急激にタイムスリップ
したことも大きいような気がしています。



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設定はあくまで設定

こんにちは。
カリメン2号です。

まだ観たことのない映画ですので、内容には触れれませんが、設定だけ見ても面白そうな作品だと思います。

>ロリコンで変態のおっさんが、いたいけな少女を弄んた挙句
二人して自滅した話だと思っている人もいるかもしれない

とありますが、設定だけ見ればもっと酷い作品も多いように思います。
カリメン2号が映画評論で取り上げた『キサラギ』という作品も、設定だけ見れば、5人のおっさんが一室で、死んだB級アイドルの死因を探るというだけですし。
何時も思うのですが、映画には必ず隠されたテーマ性があると、カリメン2号は思っています。

映画館で酔う?

カメリン2号さん
コメントありがとうございます!

ナチスを素材にしたものは、あまり高評価には
できないという、世界的な空気もあり
好き嫌いもはっきり分かれそう映画ですが
私は、隠れた名作だと思っています。

内容もですが、音楽や映像もひっくるめて
映画の空気に酔える映画というか。
カメリンさんの最新の記事を読んで
最近は映画にではなく、映画館の仕掛けというか
構造で酔いそうだと思ってしまいましたが(笑)

「愛の嵐」という昼メロ風の放題にも不満でした。
英題は「The Night Porter」
ダーク・ボガードが演じた仕事です。
案外この原題は、カメリン2号さんが言われる
この映画の隠れたテーマを暗示しているのかも、と
今気がつきました(笑)

古い映画がお嫌いでなければ
お時間がある時に観てみてください!

プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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