火の魚

映画でもドラマでも、昔から恋愛物は
それほど好きではない。
たまたま観ていて「あっ、これちょっといいかも」
と思うくらいで、たいして思い入れがない。

けれどそんな私でも、稀にどストライクというのに
巡り合えることがある。
その一本がこの「火の魚」

原作は室生犀星 
2009年 NHK広島放送制作のドラマ

出演 原田芳雄 尾野真千子

広島の小さな島に住む老作家村田(原田芳雄)のもとに
東京から、若い女性編集者折見とち子(尾野真千子)が
原稿をもらいに通ってくる。偏屈で孤独な村田は
最初はとち子が気に入らず、何かと難題をふっかけるが
次第に彼女の編集者としてのセンスや人柄に魅かれていく。
けれどとち子は、何も言わずに突然村田の許を去った。

やがてとち子が、がんで入院していると知った村田は
白いスーツ姿で、抱えきれないほどの真っ赤なバラの
花束を抱いて船に乗り、とち子の病院に向かう。

「火の魚」というタイトルは、自分の本の装丁を、金魚の
魚拓にしようと思いついた村田が、とち子に魚拓を
作ることを命じて、とち子が金魚を殺し魚拓にする。
その息詰まるような緊迫感のあるシーンから来ている。
村田は、とち子が現れなくなってから全てを理解し
自分の心の奥底に封じ込めていた想いに気づく。

村田から、バラの花束を受け取ったとち子が言う。
「先生、私今モテている気分でございます」
村田がつぶやく。
「あながち気のせいでもないぞ」

まさに、これだよなあ、これという感じで
柄にもなくこみあげるものがあった。
愛してるという言葉もなければ、抱擁もキスもない。
病気だから悲しいというようなやり取りも涙もない。
余命がなんとかというような野暮な話もない。
それでも私には「至高の愛」と呼べるような
究極の恋愛ドラマだった。

俳優さんも、これしかないというベストなキャスティング。
原田芳雄さんが亡くなられた時に、追悼特集で放送され
DVD化もされているようなのがうれしい。
制作からずいぶん時間が経って、あまり日の目を見ること
もない作品ですが、もしもそういう機会があれば
またどなたかの、目や心に留まればと願っています。


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
フリーエリア
amazon
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
900位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
406位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア