エアー2.0

エアー2・0 榎本憲男 著

社会派ミステリーとかサスペンスとか
そのへんが一番好きなジャンルなので
色々検索しているうちにたまたま行き当たった一冊。
しかし、ものすごく面白かった。

2020年、東京オリンピック開催直前。完成間近の新国立
競技場で、日雇いの建設作業員として働く中谷は、およそ
肉体労働には不向きな、奇妙なおっさんと知り合う。その
おっさんはクビになる直前に、大穴馬券を中谷に託した。
その直後、建設現場で爆発や爆破予告が相次ぐ。

冒頭を読んで、シリアスなテロ関連の小説かと思いきや
ここから話は、想定外な方向にどんどん膨らんでいく。

おっさんは、配当金を届けにきた中谷と手を組んで
自ら開発した、完璧な市場予測システム「エアー」を
政府に提供するのと引き換えに、福島の帰還困難区域
を経済自治区として運営する権利を手中にする。

とまあ、見方によっては壮大な与太話ともファンタジーとも
言えなくはないお話なのだが「資本主義をもう一度まともに
やり直そう」とする、謎の老人の正体は?そして、原発事故
で不可逆の被害を受けた土地で始まった、理想的な未来社会
の実現の可能性は?とグイグイと引っ張ってくれるので、まさに
一気読みという感じだった。

財力だけですべての勝ち負けが決まってしまう社会は
たくさんの人たちが、学ぶ意味、働く意味、ひいては生きる
意味さえも見失ってしまう。それはおかしいんだ、間違ってる
と主張する話はあるが、それじゃあこうすればいいよという
ところまで、一気に見せてくれるというような小説はあんまりない。

もちろん、その理想を実現するには、莫大な資金が必要とか
エアーを動かすために、原発一基分の電力が必要など
というような、大きな自己矛盾を含んではいるが、それでも
読み終えた後に「何とかなるんじゃないか。可能性はある
んじゃないか」と思える爽快な読後感があった。
それはたぶん、今あるものを変えようとするのではなくて
ゼロから、まったく新しいものを作り出すこと。どうすれば、
というのは、私のお粗末な頭脳では分からないんだけで。

著者の榎本さんは、シナリオライター、映画のプロデューサー、
映画監督と、多角的なお仕事をされているようで、小説作品が
少ないことが何とも残念です。もっと、もっと売れてほしい!
そしたら、次の作品が読めるかも。


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田中偲

Author:田中偲
50年以上映画を見続けてきた、でもただのミーハーな映画好きの、備忘録的感想文

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